教養教育の意義

おさかなです。暑い日々が続きますね。
最近は週3~4日くらい研究室に通ったりサボったりしています。
先日は大学のオープンキャンパスで受験を考えている中高生の皆さんから質問を受け付けるということをしていました。
全体的に将来のことを綿密に考えているなと感心した一方で、キャリア教育の弊害にもあるように将来なりたい姿について考え込んでいるのもそれはそれでやや危なげにも思いました。
将来像が実現しなかった場合でも困らないようバッファーを作ってもらいたいものです。
そこでふと私自身の体験を振り返った際に、このバッファーとなって私の身を助けてくれたのは大学低学年時の教養教育だったのかなとも思いこの記事を書くことにしました。

大学に入ってすぐに教養教育というものがあります。
これは旧帝大や慶應義塾などで特に顕著なもので、1年生のうちは高学年とは別のキャンパスに通い専門とは異なる科目を取る必要に迫られます。1990年代に大学設置基準が大綱化されるまでは教養部という別の組織だった名残らしいです。
私も必修科目として英語、第二外国語(ドイツ語を選択しました)、数理科学(解析学、線形代数)、物質科学(力学、化学熱力学、電磁気学、基礎量子化学、物性化学)、生命科学(分子生物学、細胞生物学)、情報を取らされました。
これに加え、選択科目として基礎統計、微分方程式、基礎有機化学、記号論理学、製図演習、科学史、現代教育論、植物科学なんて科目も取っていました。
私が大学1年生だった頃は必修科目がかなり多かったため、特に専門で使うことのないドイツ語とか勉強して何になるんだろうと疑問をもつこともしばしばでした。
この時は過去の記事にも書いたように食品系の学科に行くということくらいしか目標がなかったため、最低限の選択科目、その中でも統計や有機化学のように専門で使いそうな科目や単位が楽に取れる科目ばかりを取っていました。

その後は希望の学科に進学し研究室配属や大学院入試を経て研究を始めていきますが、過去の記事のように学習と研究との違いに馴染めず鬱屈としていくようになります。結局は就活も行き詰まってしまい休学して仕切り直すことにした訳ですが、休学を経て別分野に就職することに決めたため今もなんとか生きています。
この時に別分野に転身を決意できたのも、教養教育で専門分野に限らない幅広い分野を学んだことが生きているのかなと思うようになりました。
様々な分野の学び方を身につけられたことで他分野の学ぶ際の障壁が低くなったと思いますし、理解に必要な基礎も身についたとも思います。
更に、初年次は選択した第二外国語によってクラス分けされていたことから、最初から生物系の人間と固まることなく様々な学科の人と同じクラスになり人脈を広げられたことも大きいでしょう。
生物系にありがちな食品や医薬品のメーカーに勤める人だけでなく、他業界に勤める友人が多くでき実情を聞くことができたため進路選択の参考になりました。

現代の高校だと(私が育った時もそうでしたが)将来の夢を持つことを求められ、それについての作文を書くよう求められるなど将来像を明確にすることを求められてきているように感じます。
特に地方では大企業の本社は勿論のこと事業所もそこまで多くはないという事情もあり賃金低下の圧力が極めて高く、医師を始めとした専門職以外では高学歴な若者が受けてきた教育に見合うだけの給与を受け取ることがなかなか難しくなってきています。
このこともあり地方には高学歴な人間が残りにくく、高校生の保護者も目に見えて分かりやすく役に立つ資格が取得できる学科に進学することを希望する傾向にあるようです。
首都圏では景気がある程度回復し医学部を始めとした医療系学部の人気が一服した感がありますが、関西など首都圏以外の地域では景気回復の効果が波及せず医学部人気は相変わらずのようです。
そのような風潮の中で、将来に繋がるかどうかわからないように見える教養教育に対しては逆風が吹き荒れる時代となっています。

しかし、変化の激しい時代となり将来がますます不確実なものになっていく中で今後は将来を固めるということもリスクになってくるのではないでしょうか。
例えば、かつては高ステータスで収益性も高いと見られていた歯科医師や弁護士といった専門職が最近では過剰となり苦しんでいます。
このような現状だからこそ、変化の激しい時代だからこそなんでもできる人になるという教養教育の思想が解決策の一つとなってくるのかなと思うのです。
確かになんでもできるというのはごく一部の優秀な人にしか目指せない贅沢な(ややマッチョな?)目標ではありますが、理想論としては悪くないように思います。
この点で教養教育に力を入れている大学のメリットとしてつぶしが効くということが挙げられますが、これが効いてくると思うのです。
またジェネラリストであることを求められる公務員行政職やメガバンク、インフラ企業などの総合職だけでなく、特定の分野の専門職に就職した際にも他分野の知見が生きてくることもそれなりにあるのかなとは思います。
そういう意味では教養教育も幅広く役に立っているのだろうと思うのです。

今回はこれまでとします。