休学に至るまでその5 ~MBTI~

おさかなです。更新を放置していて申し訳ありません。
次のその6の記事のほうが先に書けてしまい、こちらの記事は執筆が遅れたため更新を止めてしまっていました。

前回は公務員試験で全滅するところまでを書いていきました。今回は就活留年を決意した一番のきっかけであるMBTIという性格診断について説明していきたいと思います。
今回の記事は、これまでのものとは異なり体験談というよりは概念の説明っぽい内容になります。

自己分析の重要性

前回の記事の最後に自己分析の重要性について気づいたと書きました。これは、これまでの就活で会社を問わず

  • あなたの長所と短所はなんですか
  • 他者からどのような人だと言われますか
  • 長所を仕事にどのように生かそうと考えていますか
  • 会社に対してどのように貢献できると考えていますか
  • 企業選びの軸はどのようなものですか
  • 5年後にはどのように活躍していたいか

というような質問が来ることが多く、それらに即座には答えられないということがしばしばあったからです。
どう考えても準備不足ですね。このことをもっと踏み込んで考えてみましょう。

民間就活を全滅した6月あたりに、国家総合職の人物試験の対策をするために大学のキャリアサポートセンターに行きました。
そこで職員さんが、新卒採用の面接ではCan(何ができるか)・Must(会社では何が求められるか)・Will(将来どうなりたいか)という3つの観点から自己PRをする必要があると話していました。
これらのような質問に答えられる準備をしておくのが自己分析というものでしょう。

正直な話をすると、この話を聞くまでは会社に入ることしか考えられていませんでした。
ただ、どこの会社でも将来の夢ややりたいことを聞かれるので適当にひねり出して書いていたというくらいです。
どうせ総合職採用なんだからやりたいことと言ってもできる訳ではないだろうにと思っていました。

面接の評価軸

また、理系院生と言っても生物の実験系のため数学やプログラミングにもそれほど詳しくなく、特に身についたスキルも思いついていなかったためCan(何ができるか)も示せていませんでした。
ただ、スキルを示すという発想は即戦力重視の中途採用にある発想です。日系大手の総合職採用はポテンシャル採用のため具体的なスキルを求めていません。

では、企業は面接で何を重視しているのでしょうか。
リクルートキャリアが毎年まとめている就職白書なるものによると、人柄、その企業への熱意、今後の可能性の3つが大きいようです。
一方で学生はアルバイト経験、所属クラブ・サークル、趣味・特技を過大にアピールしがちでミスマッチが生じていると言えます。
(リンク先の20ページにある
Ⅲ.企業と学生とのギャップ<企業・学生>
→ 2)企業が採用基準で重視する項目、学生が面接等でアピールする項目
を参照してください。)

つまり、企業はエピソードの中に表れている人柄を見たいということなので極論すると内容はどうでも良いと思っているはずです。
これはしばしばコンピテンシー(行動特性)面接などと言われるものです。
応募者の思考様式や行動特性が会社内で活躍している社員と似ているかどうかを調べることで将来の活躍を類推するという手法です。
そしてポテンシャル採用ではコンピテンシーの根拠を過去の学生時代のエピソードに求めているに過ぎないという訳です。
過去の話というのは、将来の話とは異なり嘘をつきにくいですからね。

このため、コンピテンシー面接では多くても3つ程のエピソードについてかなり深掘りしていきます。
これは別に内容を聞きたい訳ではなくて、応募者の過去の行動の背景にある思考様式を言語化しようとしているためです。
こうなると嘘をついてもすぐにバレますし、見栄を張る必要もそこまでないとも言えます。

これまで人柄を評価というとかなり曖昧で恣意的なものだと思っていました。
しかし、ここまでに見てきたようにそれなりに根拠のあるものだとわかり、これに向き合う必要性を感じるようになりました。

MBTI

ここまでの話の中で自己分析、特にコンピテンシーについてこれまでの経験から洗い出して言語化する必要性を感じました。
ただ、やり方が分かりませんでした。

定番どころで言うと自分史を書くだとか、要素をワークシートにまとめるというようなものがあります。
ただ、これはやや宗教じみていると言える程の怪しさを感じたのと、過去のエピソードという現象に応じてその時々の感情をいちいち追っているだけで体系立てたストーリーの理解には結びつかないのではという疑問があったことから抵抗感がかなりありました。
こういう疑問を抱くあたり理系っぽいというか、曖昧で理屈の通らないものが嫌いということですね。

そんな時にTwitterで16Personalitiesのリンクや診断結果が流れてくるようになり、興味をもつようになりました。
これはユングが提唱した心理学的類型論(Psychological Types)を基に、米国のマイヤーズ(Myers,I)とブリックス(Briggs,K)という心理学者が研究開発したMBTI(Myers-Briggs Type Indicator)という理論に従っているということです。
これを知って、心理学の理論をフレームワーク(思考のたたき台)として用いてコンピテンシーを体系的に理解すれば良いのではないか、MBTIを就活に生かせるのではないかと考えるようになりました。

MBTIそのものの解説は他のサイトにいくらでも詳しいものがあるので、ここでは簡単に説明します。
一言でまとめると、MBTIは4つの指標を使って人間を24=16の類型(タイプ)に分類しようというものです。
4つの指標とは、以下のものからなります。

  • 意識の方向:外向(E) ↔ 内向(I)
  • 認識:   現実(S) ↔ 直観(N)
  • 判断基準: 論理(T) ↔ 道理(F)
  • 戦術:   柔軟(P) ↔ 規範(J)

それぞれを更に詳しく見ていきます。

意識の方向

ある人がどこに関心を向けるか、なんらかの行動の動機がどこから由来するかを外向と内向の2つに分けます。

  • 外向(Extravert)
    他者など外界から受ける影響を重視する。風見鶏
  • 内向(Introvert)
    自己の内面の影響を重視する。マイペース

具体的な例としては、他人と話していて元気になる、電池でいうと充電されると感じる人はE型、他人と話してると疲れる、放電してると感じる人はI型ってことですね。

内向的・外向的という概念自体は世間一般でも有名ですが、定義がだいぶ異なっている印象があります。
世間一般では陽キャ陰キャの言い換えくらいにしか認識されていないように感じますが、実際はそうではありません。他人とよく話す内向型な人となんてこともよくある話となる訳です。
なお、玉手箱やCABなど(SHL社)の適性検査でも内向的な人か外向的な人かを選ばせる項目がありますが、これもこちらの意味で聞いてきているようです。

認識

どのように物事を捉え処理するかを現実と直観の2つに分けます。

  • 現実(Sensation)
    そのままあるがままに受け取ることを重視する。今や過去を重視
  • 直観(iNtuition)
    思いつきやひらめきを重視する。未来主義

言い換えるとボトムアップの発想をするのがS型で、トップダウンの発想をするのがN型ということかなと思っています。
資料によってはS型を感覚型、N型を直感型と言うこともあります。
ちなみに、米国では人口比でS型とN型がだいたい3:1くらいだと言われていることから、社会の大部分はS型の人の考え方で動いていることが多いようです。

参考:世の中にはSとNの二種類の人がいる

判断基準

どのような思考過程で意思決定するのかを論理と道理の2つに分けます。

  • 論理(Thinking)
    客観的な根拠に従って公平であることを好む
  • 道理(Feeling)
    自分や集団の価値観に従って傷つかないことを好む

この2つの違いがはっきり分かれるのが対立だといえます。
T型の人は対立することを悪いことだとはそれほど思わないはずです。成長やより良い結論のためなら対立も有益だと捉えることでしょう。
これに対しF型だと結構否定的だと捉えるはずです。価値観の衝突だから人が傷ついてしまうと捉えることでしょう。

このためT型の人は厳しく無愛想、F型の人は優しく感情豊かというイメージになるかもしれません。
これは概ね一致してきますが、喜怒哀楽の感情表現豊かな論理型ということもままあり必ずしも適切なものではありません。
というのも、打算的な思考が働く人では周囲の人に合わせて感情を表現しようとするからです。

資料によってはT型のことを思考型、F型のことを感情型と言うこともありますが、以上のような誤解を避けるためここではF型のことを道理型ということにしています。

戦術

どのように物事に接し取り組もうとするのかを規範と柔軟の2つに分けます。

  • 計画(Judging)
    決断して明確なルールを作ることを好む
  • 探索(Prospecting)
    即興に長けていて選択肢を残すことを好む

今までの3つの軸はユングが考えた心理学的類型論ですが、これはマイヤーズとブリックスが付け加えた軸です。
なお、資料によってはJ型のことを規範型、P型のことを柔軟型と言うことがあります。

日常的な行動にもよく現れてくるものなので今までの軸よりも分かりやすいかと思います。
J型ですと時間に厳しく几帳面、P型ですと優柔不断といった感じでしょう。


以上の4つのタイプを組み合わせてENFP型、ISTJ型と言ったように言い表します。
それぞれの類型毎に得意なことや苦手なこと、思考様式や行動に際しての価値観が分かれてくるらしいです。
ただ、いずれの類型にも優劣はありません。社会にはどちらの考え方も存在し、両方がバランスを取りながら動いています。
このメソッドは人と人との違いを知ってお互いに尊重しあうことを目的に作られたものだそうなので、できれば自分の類型以外の診断結果も読んで他者との相互理解に努めるのが良い活用法なのだろうと思います。

また、人間が16のタイプにくっきり分かれて分類できるというものだとも思っていません。
実際は16Personalitiesの診断結果のように、ある程度の濃淡があって分布しているものだろうと思っています。
MBTIについては今後も記事内でちょくちょく触れていきたいなと思います。

この理論は古い、最新の心理学の知見を用いたものとは違って単なる現象をまとめただけで根拠やメカニズムが怪しいという批判もあるでしょう。
確かに、ユングは晩年になって錬金術や占星術といったオカルトに手を出していたことから、現在の欧米ではユング心理学の評価が芳しくないらしいと聞きます。

その一方で、MBTIの理論はかつてリクルートのSPIの適性検査にも利用されていたようです。
現在のSPI3では厳密に準拠している訳ではありませんが、方向性は似ています。
適性検査の第1部で98題の設問がありますが、これ自体MBTIの性格診断に似ていますよね。
このことから、MBTIを就活に利用するという発想は現在の日本の新卒採用市場においては悪くはなさそうと考えています。

MBTIを就活に応用

ここまで説明してきたMBTIの話はコンピテンシーに繋がりそうですね。
つまり、企業の求める人材というのがどこの要素に当てはまるかである程度合っているか合っていないかわかると思います。

また、業務内容に必要な能力から業界毎の向き不向きも分かりそうです。
例えば、ホスピタリティが求められる医療系や接客系の仕事ならF型のほうが良いとか、論理的思考が求められるIT系やエンジニアの仕事ならT型のほうが好ましいと言えそうです。
正確な仕事が求められる仕事ならJ型、その場の状況に合わせて臨機応変に対応する仕事ならP型のほうが良さそうです。
このような感触をまとめたサイトとして、適職診断16があります。
自身の一番の長所を生かせそうかという軸で適職を探そうと思うならばこれも有効でしょう。

勿論、企業は特定の類型の人材だけを採用しようとしてはいないことでしょう。
なんだかんだ言いつつ多様性を重視しており、出身大学だけでなくタイプにおいてもなるべく多様な人材をバランス良く取ろうとしているはずです。
企業にも多様な仕事があるため、1つの類型だけでは回らないでしょう。
メーカー1つ取っても研究開発、生産技術、品質保証、営業、企画、コーポレート(総務、人事、法務、知財、経理、財務etc.)のそれぞれで求められてくる人材は違うはずです。

また、ジョブローテーションの激しい総合職ではなるべく中庸に近いバランスの良い人材を取ろうとするはずです。
一方で専門的な要素の強い職業や人数の少ない業界では、多少偏っていても良いから尖った人材を取ろうとするはずです。

例えばコンサルティング業界ではルーティン業務を遂行している顧客が対応に慣れていないこれまでにはないイレギュラーな案件(海外進出、M&A、リストラクチャリングなど)に対応することからN型、論理的に思考し説明する必要があることからT型、顧客とは別の外部の立場として堂々と意見を述べる必要があることからI型の人材を求めていると考えられます。
この中でも特にN型とT型を強く求めているために、採用試験ではフェルミ推定やケース問題を必ずと言って良い程に課してふるい分けてくるのでしょう。

就職留年を決意

今まで書いてきたことを踏まえて私の選択を振り返ってみると適切と言えたでしょうか。
調べてみたところ、私の場合はI型とT型が格段に強く、S型も結構強めでJ型かP型かと言われるとややP型くらいかといった調子でした。

この一方で食品業界は主にBtoCで消費者の動向に合わせる必要があることから、E型やF型が重視されていると考えられます。
そうするとなかなかの悪手となりますね。合いそうかどうかを全く考えていなかった結果です。

また、ジョブローテーションが激しく専門性が身につきにくい行政職の公務員ではバランス感覚が求められることから、偏った結果を叩き出しているようではなかなか無理があったのかなとも思いました。
行政は顧客を選べないことから理不尽なことにも耐える几帳面さと、組織構造がきっちりしている(上下関係のピラミッドがきっちりしている、チーム優先・法令手続遵守でスタンドプレーは許されない)ことからチームワークへの適応力・協調性も求められます。
このためESTJ型、ESFJ型、ISTJ型、ISFJ型、ISFP型が好まれるというのももっともでしょう。
省庁や組織によってはINTJ、ENTJ型も好まれるようです。

こうして考えると、仕事に応じて適性検査の結果を操作し面接での受け答えを変えたところで仕事に向き合った時に限界は訪れるでしょう。
それなら自分の類型やなりたい姿、理想の過ごし方から逆算して適職を探すほうが良いのではないでしょうか。
そのためには、なるべく多くの職業を知り、勤めている方から直接話を聞いて求められる要素を探す必要性があると思いました。

公務員以外の仕事を知らなすぎた、国家総合職も都庁もだめだったら留年して職業を探すための時間を作ろうと考えるようになりました。
まだ6月半ばだったのにこんなことを考えていたので、研究室の同期には勿論諦めるのが早すぎると批判された記憶があります。
ただ、これは研究しながら片手間にできることではない、どこかできちんと向き合う時間が欲しいと思っていたのは確かです。

ここまでで今回のお話は終わりです。とてつもなく長い記事になってしまいましたがいかがでしたか。
なんとなく就活してよくわからないまま内定をもらった人も多いだろう中でここまで考えを巡らせていたのも不思議なものです。
さて、次回で休学に至るまでという名前での連載も最後です。次回は7月に公務員試験に落ちてから9月になるまでの過ごし方についてまとめておきたいと思います。

休学に至るまでその6 ~不登校へ~ に続く